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第4話  

Author: 蘇南系
薄く開いた扉の隙間から、睦美はその光景を目にして息を呑んだ。

――時彦が夢乃を抱き寄せ、夢中で唇を重ねている。

先ほど耳にした言葉が胸を突き刺し、体が硬直する。

夢乃の言ったことはやはり嘘ではなかった。自分はただの暇つぶしで、経済面で支えてきたなどと偉そうに思っていたのは、自分の思い上がりにすぎなかったのだ。

けれど真実がどうであれ、もはや関係ない。いずれ彼のもとを去るのだから。

睦美はかすかに笑みを浮かべ、背を向けようとした。

その瞬間、廊下にむせ返るような煙が流れ込み、警報が耳を裂く。

「火事だ!」

叫び声が響き、クラブは一気に阿鼻叫喚の渦へと変わった。

押し寄せる人波に呑まれ、睦美は床に叩きつけられた。必死に起き上がろうとしても、背中に重みがのしかかり、再び押さえつけられる。

どうにか顔を上げたとき、視界に映ったのは——夢乃を抱えて出口へ駆けていく時彦の姿だった。

喉を裂くように彼の名を叫び、這うように手を伸ばす。

その声が届いたのか、時彦はふと振り返った。血に染まった睦美の姿を目にした瞬間、彼の肩が震える。

一歩踏み戻しかけた。だが腕の中の夢乃が小さく身じろぐと、ためらいののち、背を向けて走り去ってしまった。

――見捨てられた。睦美はその場に固まる。守ると誓った男は、命の危機にある自分を、こうも簡単に裏切ったのだ。

睦美は深く息を吸い込み、壁に手をついてよろめきながら立ち上がる。人の流れに押されるまま、外へと足を運んだ。

クラブを出て、新鮮な空気を吸った瞬間、力が抜け、膝から崩れ落ちる。

――危うく死ぬところだった。

呼吸を整え、顔を上げると、近くにいた時彦と目が合った。

彼の瞳には焦りと後悔が浮かんでいる。だが、夢乃のそばに止まり、一歩も近づいてはこない。

夢乃に誤解されるのを恐れているのだろうか。そう思った途端、睦美の唇に皮肉な笑みが浮かび、涙がこぼれた。

――あの人は、指先の小さな傷でも慌てて病院に連れて行こうとした人だった。けれど今は、彼の目に夢乃しか映っていない。

帰宅後、睦美はひとりで救急箱を取り出し、傷を消毒して包帯を巻いた。全身の疲労に抗えず、ソファに身を投げ出すと、そのまま眠りに落ちる。

目を覚ますと深夜だった。案の定、時彦はまだ戻っていない。

問いただす気力も湧かず、夜明け前に家を出ようとしたその時、玄関で駆け込んできた時彦と鉢合わせた。

彼は睦美を見るなり抱き寄せ、全身を確かめるように彼女を見つめた。

「病院には行ったのか?他に痛むところは?」

その声に、睦美はしばらく呆然とした。今さら取り繕うようなその優しさは、あまりにも遅いのだ。

「ごめん、睦美。昨日のあの子は妹なんだ。子どもの頃から火が怖くて、だからどうしても離れられなくて……」

妹……

夢乃のために、わざわざそんな嘘を作り上げたのか。

「妹でも何でもいいわ。時彦、もうあなたを支えるお金はないの。だからこれからは、あなたは自由よ」

その言葉に、彼の顔色がさっと変わる。睦美を強く抱き寄せ、耳元で押し殺した声をぶつけてきた。

「どういうつもりだ。飽きたから捨てるっていうのか?

そんなの嫌だ、一生俺と暮らしていくって約束してたじゃないか」

睦美は首を左右に振り、彼の肩を押しのける。

「私たちはただの遊びなんだから、真剣になることはないわ。この三年、私は十分尽くしてきたし、破産した今、しがみつかれても困る」

だが彼はなおも睦美を離さない。強引に腕を絡め、彼女の耳に牙を立てて囁く。

「いや、認めない。俺は君を離さない。絶対にだ」
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